対外受精を希望する夫婦にとって、ネット利用で卵子の提供者探しが容易になる一方、値段の高騰や悪質業者の介在といった問題も浮上している。(ロイター)
2006年11月27日 12時28分 更新
推定30億ドル規模の代理出産業界がインターネットへ進出する中、ネットに文字通り生命を見出す人が増えている。
しかし、どんなオンラインベンチャー事業にも言えることだが、ネットショッピングには危険が付き物だ。
この場合、インターネットはコンシューマー(時にはどうしても子供が欲しいという人)が、手っ取り早くかつ目立たずに卵子や精子の提供者を見つける手段を与えてくれるかもしれない。しかし金銭の損失や失望につながる可能性もあると、不妊治療の専門家は指摘する。
「このビジネスの多くがサイバースペースに移っているのは驚くにあたらない。Lands'
Endの商品を店で買うのは気にならなくても、卵子を公衆の面前で買うわけにはいかない」。米代理出産業界の規制推進派であるハーバードビジネススクールのデボラ・スパー教授はこう話す。
今でも単純にショッピングカートをクリックしてネットで卵子を入手するというわけにはいかず、提供を受ける側と提供する側の適切な照合、選別、調整のために必要な手順や注意事項について理解していない人が多いとスパー氏は言う。
別の専門家によると、あまり評判の良くない卵子提供サイトでは、提供を受けたい側がプロフィールを見るために返金不可の多額の前金を要求されてそれを支払ったり、何カ月も提供者が現れるのを待たされた挙句、結局実現しないこともあるという。
卵子提供を受けるためのコストは数年前は約2500ドルだったのが、高い場合で3万5000ドルにまで急騰した。これは、規制による監視がないため「エッグハンター」と呼ばれる新手の販促業者が、提供を受ける側と提供する側とのネット上の仲介役となることができてしまうからだと、不妊治療を専門とするアリゾナ生殖医療専門施設の共同メディカルディレクター、ドリュー・モフィット医師は解説する。
実際、Googleで無作為に「卵子ドナー」と検索してみると、120万近いリンクが出てきた。中には「ホットでスマートな卵子ドナー」をうたったものや、学生向けの広告で卵子と引き換えに書籍代や学費、“(美容整形など)選択的”手術代として7000ドルなどという金額を提示しているものもあった。
「エッグハンターの介在は料金急騰を招く一因となっている。これで結局損をするのは提供を受ける側だ」とモフィット氏。
女性は大金に目がくらんでしまうこともあるが、ドナーになれば時間を取られ、体に負担がかかる可能性もあるという現実とリスクも認識すべきだと専門家は言う。自分が誕生を手助けした子供をほかの女性が育てているのを後になって悔やむ女性もいるという。
「ネットを見るたびに卵子ドナー業者が5件ずつ増え、卵子と引き換えに多額の現金をすぐにもらえるとか美容整形まで受けられるなどと約束していることにショックを受ける」。1992年に設立された卵子ドナープログラム(本拠ロサンゼルス)のシェリー・スミス氏はこう話す。
確かに米食品医薬品局はあらゆる人体組織の扱いに対し規制をかけており、専門組織の米生殖医療学会(www.asrm.org)と生殖補助医療学会(www.start.org)では、生殖医療行為に関する基準を設けている。しかしモフィット氏によると、いわゆるエッグハンターの多くは同学会の認可を受けていないのが普通だという。
「インターネットに関する限り、遠くオーストラリアの夫婦とも協力して何百人ものドナー情報を簡単に利用してもらえるというメリットがある」とスミス氏は言う。
「しかし問題は、このせいで提供者を物として見るようになり、家族形成において感じるべき人間的触れ合いがなくなってしまうことだ。カタログを見て車を買うのとはわけが違う」(同氏)
認可施設での卵子提供プロセスにはさまざまな段階がある。提供を受けたい女性と父親となる男性の精子は、妊娠が可能であることを確認するための検査を受ける。
卵子提供者は心理テストと伝染病の検査で選別され、複数の卵子を生成するためのホルモンを服用する。一方、提供を受ける側はドナーの生理の周期に合わせるためにホルモンを服用する。
採卵の際は麻酔がかけられ、処置室で受精の準備が行われる。受精の2〜3日後、受精卵を被提供者の子宮に移植する準備が整う。
スミス氏のプログラムは通常2〜3カ月かかるという。提供を受ける側とのコンサルティングから始まり、その後コーディネーターの助けで提供を受ける側がドナーを選ぶ。5550ドルの料金には弁護士費用、保険、有資格の遺伝学者との面談費用が含まれる。
卵子ドナーサイトを探す際にチェックすべき点としてスミス氏が挙げるのは、郵便のあて先が記載されているか、損害賠償保険に入っているか、有資格の施術者がいるかどうかなど。
「子供ができない夫婦の絶望に付け込んで利益を得ている業者や、途中で手を引いてしまう業者が開設したWebサイトも存在する」と同氏は話し、自分が知っている夫婦の中には2万5000ドル近くを失った人もいると言い添えた。
美しい卵子ドナーの写真を掲載しておきながら、宣伝文句とは裏腹にその女性は実際にはもう卵子を提供していないという、おとり販売の手口を使ったサイトについても同氏は注意を促している。
「生命の誕生にかかわるビジネスが存在していながら、それにまったく規制がかけられていないのは論外だ」と語るハーバードのスパー氏は、「The
Baby Business: How Money, Science, and Politics Drive the Commerce of Conception」(ベビービジネス:金の論理と科学と政治が妊娠商売に拍車をかける)の著者。同氏によるとこの著書は、業界の規制について論じているという。
「こうしたサイトと連携しているのはほとんどが医療関係者だが、悪徳業者も存在する。だから私は規制が全関係者にとって最善の策だと言っている」と同氏は語った。
[ロサンゼルス 24日 ロイター]